恐怖
虫が嫌いだ。もう、あらゆる要素が嫌いだ。考えるのも嫌だ。見るのも嫌だけど、殺すのはもっと嫌なので、見逃している。違う、逃げている。
子どものころは、そんなに苦手じゃなかったはずだ。いつから嫌いになったんだろうと考えてみて、思い当たったエピソードが2つ。高校のとき野外実習施設に宿泊したときに見た、窓ガラス一面の、蛾のからだの裏側。田口ランディの「もう消費すら快楽じゃない彼女へ」で読んだ、オウム真理教に入信した女性が語ったという羽虫の話。どちらもたぶん15歳くらいのこと。
なぜ苦手になってしまったのかを考えるのは、なかなかの苦行だ。自分の中にあるトラウマとじっくり向き合うことによって問題が解決する可能性もあるけれど、今日のところはやめておこう。
「嫌い」という言葉と「苦手」という言葉は同じ意味ではないけれど、この文章ではほとんど同じ意味。