なぜ炊事は簡単ではないのか――ほんとうに使える料理本のための覚書

たくさんの料理本が売られている。料理名や食材名でウェブ検索すれば、クックパッドをはじめとするたくさんのレシピサイトがヒットする。時短料理、簡単レシピ、意外な組み合わせで手軽にごちそうメニュー。気軽に通える雰囲気の調理教室がショッピングモー…

夢眠ネムについて、あるいは誰かと夢を見ること

「夢眠ネム」について語らなくてはならない。夢眠ネム|VOCALOID(TM)4 夢眠ネムとはなにか。夢眠ねむの声をもとにつくられたVOCALOIDライブラリである。 夢眠ねむとは誰か。アイドルグループ「でんぱ組.inc」のメンバーである。いまわたしがいちばん応援して…

カフェリブロつくば店の閉店によせて

筑波西武が閉店する。つくば市に電車が通る前のある一時期、つくば市の中心は、バスセンターと西武百貨店にあった。つくばエクスプレスが開通し、街の重心は次第に東京へ近づこうとし、並行してあらためてモータリゼーションが起こり、TX終点つくば駅は必ず…

かつて『ジーンダイバー』というアニメがあった

1993年に小学生だった私にとって、NHK教育で「天才てれびくん」放送開始されたことは特別なできごとだった。テレビのなかで、自分と同世代の子どもたちがたくさんいて、奇抜な衣装を身にまとい、不思議なCG合成といっしょに、なにやら面白そうなことをしてい…

「適当な暮らし」のために

暮らしや生活に関する話が気になっている。「丁寧な暮らし」、「シンプルな暮らし」、「断捨離」、「ミニマリスト」……。 そういった書籍などを見つけるたびになんとなくチェックしているのだが、どうもピンとこない。わたしがよいと思う概念とはどうもズレて…

2万円のエアロバイクを買うというひとつの答え

思い立って、エアロバイクを買った。運動をする必要があることは理解し続けてきたつもりだし、運動をしようという意志もいつも持ち続けてきた。しかし、実践することはなかなか難しい。 どのような運動をするべきなのか。ランニングはダメだと思った。ランニ…

『シン・ゴジラ』感想(ネタバレについて、ゴジラのいない世界、いっけん描かれていないように見えるもの)

映画『シン・ゴジラ』を2回観た。少なくとももう1度は映画館で観るだろう。 以下、内容に触れる。 ■ ツイッターなどを見ると、多くの人が「ネタバレにならないように」などと書き、「一切の情報を入れずに観てほしい」などと書いている。しかし私はこれがど…

私たちには身体がある――細馬宏通『介護するからだ』

介護するからだ (シリーズ ケアをひらく)作者: 細馬宏通出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2016/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る『介護するからだ』は、とてもおもしろい本だ。介護や医療に関わる人だけでなく、多くの人に読まれて…

「洋ニンジン」を知っていますか(食品スーパー旅行記)

正月休みを利用して、関西方面へ行ってきました。 旅行に行ったときは、できるだけ食品スーパーへ立ち寄るようにしています。そこに生活する人がいるかぎり、その土地には食品スーパーがあります。日本中のどこでもスーパーなんて同じだろうと思われるかもし…

繰り返される生活を見つめること

この記事は、家庭を支える技術 Advent Calendar 2015 の5日目の記事として書かれています。 ここでの「技術」ということばは、ゴリゴリと音を立てながらコードを書くプログラマであったり、ネガティブな意味の乗らない「ハッカー」のような人たちを連想させ…

海老名市立中央図書館に行ってきた話

2015年10月9日、「ツタヤ図書館」として話題になっている海老名市立中央図書館に行ってきました。 入り口をはいるとすぐに、蔦屋書店とスターバックスコーヒーがあります。そしてその先には吹き抜けの階段と、コンクリートの梁がむき出しになった、いい感じ…

誰が「珈琲」をつくったのか? 検索と図書館で「珈琲」の歴史を探すゲーム #珈琲咖啡探索隊

コーヒー、漢字で書けますか? 「上島珈琲店」や「珈琲館」、「炭焼珈琲飴」など、店名や商品名にもあるように、「珈琲」と書くのが普通です。 では、その漢字表記はいったいいつから使われているのでしょうか。 そもそもコーヒーが日本で初めて飲まれたのは…

ゴマ煎り器をつかってコーヒー豆の焙煎を自宅でおこなう

コーヒーにこだわる人は少なくないが、豆を焼くところから自分でやるとなると、それはたぶんちょっと面倒なタイプの人だろう。自宅でうっかりコーヒー豆の焙煎を始めるために必要なこと(焙煎導入編) - うしとみ 自宅焙煎の「導入編」と題したものを以前書…

『響け!ユーフォニアム』はなぜ素晴らしいのか きっと「特別」ではない私たちの物語

テレビアニメ『響け!ユーフォニアム』が素晴らしい。この文章を書く時点では第12話まで放映されていて、最終話となるはずの第13話は未放送だが、素晴らしいと言い切ってしまっていいだろう。 『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』公式サイ…

『新・冒険王』、繰り返される演劇のことば

六本木シアターにて、平田オリザの『新・冒険王』を観た。 青年団『冒険王』/青年団+第12言語演劇スタジオ『新・冒険王』|公演履歴|公演案内|青年団公式ホームページ平田オリザ脚本の舞台を観るのは、舞台『幕が上がる』につづいて2回目。 『幕が上がる…

アイドルとしての栗原はるみ、思想としての家事

生きることは生き続けることであり、生きることは食べることである。すなわち、生きることは食べ続けることである。食事によって、日々の生命活動は成り立っている。だから、食事は重要なのであり、家族の食事をつかさどる「主婦/主夫」の役割は大きい。小…

舞台『幕が上がる』が2015年に演じられた意味について

幸運にも、舞台『幕が上がる』を観劇する機会を得た。 舞台「幕が上がる」 | PARCO STAGE 平田オリザ原作・脚本、ももいろクローバーZ主演の舞台だ。とてもチケットが取れるとは思っていなかったが、巡りあわせというのはあるものだと思う。 作品について語…

黒塗りメイク事件に思う、ももクロとモノノフの共犯状況について

ももいろクローバーZの熱心なファンである私にとっては残念な話題がある。 人種差別と批判された「ももクロ」の「黒塗りメイク」 米国の学生はどう反応したか? - 弁護士ドットコム 上掲の弁護士ドットコムの記事には、ももクロの写真自体は載っていないが、…

『幕が上がる』は『桐島』を超えたか 〈舞台装置〉としてのももクロ

映画『幕が上がる』を観た。 いい映画だった。かなりいい映画だと思う。映画『幕が上がる』公式サイト 青春映画である。田舎の高校の弱小演劇部が、全国大会を目指す。新任のすごい先生と、強豪校からの転校生。挫折と成長と事件を通して主人公たちが成長し…

自炊スターターキット、あるいは一人暮らしで買わなくてもいいものリスト

人は誰でも食べずには生きていけないが、何をどのように食べるかについては様々な選択肢がある。健康で文化的な生活を維持するためには、食事の用意を自分で行うことが重要だ。しかし、日々の炊事を運用することは予想以上に難しい。さあ自炊を始めよう、と…

まず、ご飯より始めよ(生き延びるための自炊入門)

人は誰でも食べずには生きていけないが、何をどのように食べるかについては様々な選択肢がある。健康で文化的な生活を維持するためには、食事の用意を自分で行うことが重要だ。しかし、日々の炊事を運用することは予想以上に難しい。 自炊をするときに重要な…

2014年にいちばん私の心を打ったのは、映画『5つ数えれば君の夢』だった

年の暮れ、さて今年触れた作品はどんなだっただろう、何が素晴らしかっただろうと振り返ったとき、いちばん素晴らしかったのは映画『5つ数えれば君の夢』だと確信しています。 3月に映画館で観たときに、これはすごいぞと興奮し、ブログにも書きました。 …

「きょうの料理ビギナーズ」が素晴らしい3つの理由

NHKの料理番組、「きょうの料理ビギナーズ」。2007年4月から放送されているそうだけど、私が毎回観るようになったのはこの一年ほどのこと。この番組が素晴らしい。 「きょうの料理ビギナーズ」は5分間の番組だ。そんな短時間には料理は完成しないので、当然…

『やっぱり肉料理』、肉を喰おう肉を。

お付き合いのある料理人がレシピ本を出版したので購入。いい本なので紹介。やっぱり肉料理~カリフォルニア・キュイジーヌのとっておきレシピ作者: 横田渉出版社/メーカー: 大和書房発売日: 2014/10/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ …

演奏会用の芳名帳をつくってみた

とある演奏会のお手伝いをしておりまして、そのなかで「芳名帳を置きたい」ということで私が用意することになりました。 芳名帳というのは、その名の通り「お客様のお名前を書いていただくノート」です。冠婚葬祭の場面や、個展サイズの美術展などで見る機会…

はじめてのフィギュアスケート観戦

(この文章は、2013年7月にfacebookへ投稿した文章を改定したものです。) 「ミュージカルと大相撲とフィギュアスケートは一度は生で観たい」と以前から思っていたのですが、安藤美姫さんの引退予告を知り、「観るなら今でしょ!」ということで行ってきまし…

ももクロ夏のバカ騒ぎ2014での『キミノアト』について思ったこと

私の2014年はももいろクローバーZとともにあると7月末の時点で言い切って差し支えない。 2013年12月から真面目に視聴するようになり、1ヶ月後にはすっかりハマっている。それから何度かライブにも足を運び、今回の「夏のバカ騒ぎ2014」は当然のように2日公演…

むしろ大人に読ませてみたい『中高生のための「かたづけ」の本』

片付けに関する書籍はたくさんある。 私にとって、片付け精神論のベストは『人生がときめく片づけの魔法』であり、片付け技術書のベストは『片づけの解剖図鑑』だ。 岩波ジュニア新書から『中高生のための「かたづけ」の本』が、数ある片付け指南書群のなか…

生き続ける私の個人史(29歳から30歳へ)

私の20代は、平均的な同世代と比べるならずいぶん波瀾万丈なものだった。 平均的な同世代は、致命的には精神を病まないし、大学を中退しない。そんなことがあれば普通なら実家に帰るかもしれないが、私は帰らなかった。また、私と同程度の大学に入った同世代…

小説『百年の孤独』を読んだ(読書ガイドのための人物リスト付き)

有名なものには触れておきたいのが人情だ。 訃報に触れての作品への接触は、きっかけとしては最善のものとはいえないだろうけれど、おそらく最後のきっかけとなる。作者の訃報とそれを悲しみ偲ぶ声によってそそられた興味は、それが熱いうちに打たなければ、…