コ展 @雙峰祭2006


2006年10月7日〜9日にかけて、筑波大学の学園祭(雙峰祭)において、コバタカ氏による個展「コ展」が開かれました。そのときの様子などをお送りします。(2006/10/16)


会場は小さな教室

会場となったのは、普段は授業が行われたり、吹奏楽団のサックス奏者が個人練習をしたりする小さな教室です。近くの教室では、「純喫茶」を開いていたり、「マジックショー」をやっていたりと、まさに学園祭という雰囲気でした。



教室の中央と壁際に、机が並べられていて、そこにベニヤ板が立て掛けてあります。そのベニヤ板に、小さな白いカードが、虫ピンでたくさん留められています。
このカードに印刷された短い文が、コバタカ*1がこれまでに書いてきた作品です。

「今日は何の日?」


まずは壁沿いに、「今日は何の日?」を見ていきます。(これについては以前紹介文を書いているので、そちらもご覧ください)

入り口の近くから、月ごとに、語呂合わせの書かれたカードが並んでいます。整然と並んでいる月もあれば、そろって少し傾いでいる月もあります。ところどころに黒いカードが貼ってあって、語呂の解説をしていることもあるのですが、基本的にはほとんど説明はありません。語呂合わせの分かりやすさはかなり差があり、コバタカ本人も語呂の意味をなかなか思い出せない日もあったようです。


今年のオススメ、イブ時効の日。
黒いカードはいわゆる手書きポップです。このほかにも、たとえば、2月18日の隣に「じゃあ8月21日は?」というようなカードがありました。



この日(学園祭初日)は10月7日。転々の日*2、めまぐるしくイベントが重なる日、だそうです。なんだか上手いこと掛かっている気がします。
最後には、こんなメッセージが。



「3行スケッチ」


教室の中央には、もうひとつの作品「3行スケッチ」が展示してあります。これは、全部で51篇からなる詩篇です。各篇はすべて4行で、1篇あたりの文字数は20字前後です。
これも小さなカードになっていて、虫ピンで板に留められています。

この作品は、各編の最初の文字が五十音のそれぞれに対応しています。(実際に作品を読んでみてください)
展示は五十音順に並んでいるのですが、このことについての解説は特にありません。筆者はすでに作品を読んでいたので、『少し不親切かな』とも思いました。初めて読んだ人には、この仕掛けはすぐには分からないでしょう。でも、ある程度読み進めるうちに、気が付きます。『あ、これ、あいうえお順になってるんだ』。そして心の中でニヤリと微笑むのです。


コバタカに話を聞いてみた


学園祭最終日の夕方に、展示の片づけを手伝いながら、少し話をしました。録音していたわけではないので、若干の創作や補足が含まれています。


反応はどうだったか

コ「知人以外にもたくさん来てもらえた。今日は何の日?をみながら、自分たちの誕生日や記念日が"何の日"なのかを話しているグループもいた。占い感覚で見ているらしく、作者の発想と違っていて面白かった。
年配の方に「いろいろな言葉があって、いろいろ考えるからボケ防止になっていい」というようなことを言われた。『ラスボス』とはどういう意味かと聞かれた。
2人くらいから「あなたは詩人になるべきだ」というようなことを言われた。」

詩人に"なるべきだ"という表現は、ちょっと面白いです。


なぜ書き始めたのか

コ「blogを始めたときに、毎日更新しようと考えた。それで、毎日更新せざるを得ないコンテンツを考えた。」

彼の文章を読んだり、話をしたりしていると、この人は決まりごとを作るのが好きなんだな、と感じます。自分に対して簡単なルールを作り、そのルールのなかで活動することを楽しんでいるように思えます。


・展示にあたって改変はしなかったのか

コ「数日分は誤字を修正したけれど、ほとんどそのまま。最初のころはまだ形が定まっていない。5月27日の3行目とか(まだ、始めて2日目)。」


・次の企画は?(1日1短歌という企画、最近止まっているけど)

コ「構想中。今日は何の日?の2巡目をやるかもしれない。そのときは、1日1更新ではなく、何日かで一気に作ってしまうと思う。」

最後に


ここからは、筆者の感想です。


実は、彼は、とある出版社の公募に「3行スケッチ」を応募しています。
自分の書いたものの評価を知りたい。知人ではなく、自分のことをまったく知らない人からの評価がほしい。そう思って作品を応募した出版社は、しかし倒産してしまいました。笑えばいいのか、落胆すればいいのか、よく分からない話です。

彼が「コ展」を開いたのは、たぶん、このためだったのだと思います。自分のことを知らない人に、自分の作品を知ってもらう。ナマの感想を聞く。これは、たぶん、恐いことです。会場に来てくれたお客さんが、ざっと見るだけですぐに出て行ってしまうかもしれない。厳しい感想を言われてしまうかもしれない。
それでも、見てほしかったのでしょう。
ひとりで準備して、ひとりで店番をして、実行委員会に割り当てられた雑務もしつつ、ほかの展示の見学はほとんどすることなく、ひとりで片づけまでする。簡単にできることではないと思います。


学園祭終了後、彼は自身のblogのコメント欄で、こんなことを書いています。

『本人が一番楽しそうでしたと言われがちですが、実際そうです。
色んな人に見てもらえたのが一番楽しかったです。』

これからも、楽しみです。




なお、文中でもリンクしていますが、コバタカのblogはhttp://blog.livedoor.jp/sasamistreet/、作品をまとめたサイトはhttp://www2.accsnet.ne.jp/~amx06320/です。このレポートの最初の画像はサイトから借りました。

*1:以下、敬称略

*2:語呂の解説はhttp://blog.livedoor.jp/sasamistreet/archives/50093561.html参照