こんな夢を見た。

私は、人の「死」が見える。未来予知みたいなものだ。これから死ぬ人の、その最期のときが見えてしまう。これは、少しも楽しいことではない。うまくやれば金儲けにだって利用できるのだろうが、私にはできない。
見えるようになったのは、つい最近のことだ。きっかけは想像できる。認めたくはないが。

街を歩いていると、行き交う人たちの残りの時間と最期の様子が、どんどん見えてくる。ほとんどの人にとって、死は、すぐ近くにある。気にし始めるとつらくなるので、いつも感覚を閉ざしている。
ああ、あそこで喧嘩しているふたり。彼は、自分がもうすぐ死んでしまうことを知らない。彼女は、相手がもうすぐ死んでしまうことを知らない。

自分が泣いていることに気付いて、目が覚めた。
目が覚めたことに気付きながら、私はまだ泣いていた。
外はまだ暗い。朝になったら、あいつに電話をしよう。どう考えても悪いのは向こうの方だけれど、まあ、仕方がない。ベッドの中で、私は少し笑った。
こういうことは、好きになった方が負けなのだ。