映画「スカイ・クロラ」を観た

好きな作家を上げろといわれればまず森博嗣の名前が出てくるが、原作の小説「スカイ・クロラ」シリーズはすべて読んだわけではない。原作の小説は「ナ・バ・テア」、「ダウン・ツ・ヘヴン」、「フラッタ・リンツ・ライフ」、「クレィドゥ・ザ・スカイ」、「スカイ・クロラ」の計5冊からなるが、私が読んだのは「スカイ・クロラ」と「ナ・バ・テア」だけだ。森博嗣は、このスカイ・クロラシリーズを自分の代表作としたいと書いているが、私はそれほど好きな作品ではない。森作品だったらやはり「すべてがFになる」から始まる「S&Mシリーズ」や、「Φは壊れたね」から始まる「Gシリーズ」、あるいは「水柿くんシリーズ」などが好きだ。
映画監督の押井守については、私は特に思うところがない。映画「GHOST IN THE SHELL /攻殻機動隊」、「イノセンス」や、「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は借りてきて観たし、どれも面白いと思ったが、それ以上の思い入れはない。おそらく多くの人にとってそうであるように、アニメ作家といえば「宮崎駿か、それ以外」という認識だ。

そういうわけで、映画「スカイ・クロラ」を観るにあたっては、中途半端な姿勢で臨んだという感じがあるかもしれない。
映画の冒頭は、空と雲だ。この雲をみて私は「よし」と思った。小説「スカイ・クロラ」単行本の表紙の、あの空だった。

スカイ・クロラ

スカイ・クロラ

オープニングタイトルが映し出されるまでの数分間だけで、十分に映画館で見る価値のある映像だと思った。この空のためにお金を出す価値はある。
映画の舞台は戦争が行われている世界であり、戦闘機どうしによる戦いによって戦争が進行している。何度かある空中戦の映像はとても素晴らしく、観ていてワクワクした。
これ以上何か書こうとするとネタバレになってしまう。押井監督のことは知らないが、森はネタバレを嫌うので、このあたりで書くのをやめたいが、もう少しだけ。
この映画は、小説「スカイ・クロラ」の映画化ではなく、「スカイ・クロラ」シリーズの映画化だ。これを意識しないで映画を観ると、いくらか違和感があるだろうと思う。
すでに映画をみた何人かの感想には「テーマが分かりやすすぎる」というものがあったが、私はあのくらいでいいのだと思う。逆に、ストーリィの展開が速すぎて分かりにくいのではないかと思った。
面白い映画だったし、もう一度劇場で観てもいいと思ったが、原作のファンではあるがアニメ映画が好きでないような人には勧められないと思った。映画「スカイ・クロラ」は押井作品であるのだろう。