ゲームをしよう。人生という名のゲームを。

「ゲームをしよう。人生という名のゲームだ。
ぼくは、ぼくの人生を賭ける。きみは、きみの人生を賭けるんだ。
ゲームの勝敗は、プレイヤが決めていい。この点が、このゲームの最大の特徴だ。きみが『勝った』と思ったなら、きみの勝ち。『負けだ』と思うなら、きみの負けだ。
ひとつ注意しておくと、このゲームは、競争が目的ではない。他のプレイヤより劣っていると感じたからといって、『負けた』と思う必要はないんだ。勝敗を決めるのは、自分自身だ。
なぜ競争ではないのかって? ゴールが一緒じゃないからだよ。このゲームは、いつ終わるのか分からない。どのくらい続くのか、あと50年プレイしなくちゃならないのか、あと3ヶ月で終わるのか、はっきりしない。構造上の問題で仕方がないんだが、プレイ時間が公平ではないんだよ。だから競争にならない。公平なのは、どんなゲームも必ず終わるという点だけなんだ。
ゲームの目的? まあ、なんでもいいんだ。それも自由に決められる。少なくとも、きみがプレイする世界においてはね。これは実は贅沢なことなんだけど……、まあ関係のないことだね。
このゲームは、実はもうずいぶん前から始まっている。自覚はなかったかもしれないけど、きみはもうゲームを始めているんだ。どうだい? いまの時点での勝敗は。『勝ってる』? 『負けてる』? まあ、最終的に、累積の勝ち点が多ければいいという発想もあるし、ゲーム終了のタイミングで勝っていればいいともいえる。それも任せるよ。
ぼく? ぼくのゲームの話? そうだね、いまは『勝ってる』かな。でも、もっと大きな『勝ち』を取りに行きたい。あまり多くは望まないつもりだけどね。
お金のことを考えるのは悪くない方法だよ。このゲームじゃ、モンスタを倒したからって直接お金がもらえるわけじゃないからね。きみはずいぶん高価な装備をしているみたいだけど、それ、全部自分で買ったの? 買ってもらったんでしょ、たとえばその言語能力とかさ。それを返済する、ってのも初期のイベントとしては、いいかもね。
ああ、そうだ、最後にひとつ。リセットボタンは押さないように。勝手にゲームをやめることはできないんだ。迷惑な仕様だけど、そういうルールだから、よろしく。ペナルティは『強くてニューゲーム』になるって話だけど、どうだろうね。
さて、続きを始めようか。楽しいゲームの再開だ。」