吾妻まつりのはなし

天久保オールスターズバンドというバンドのブログに書いた文章を転載します。

今日は「吾妻まつり」についてお話しようと思います。

吾妻まつりは、つくば市吾妻地区のお祭りです。
つくば駅北の広場、中央公園で開催されています。公園の空にはちょうちんの電飾が掛かり、地域のお父さんお母さんたちの出店する模擬店が並び、林の中には子どもたちの手作りお化け屋敷が登場し、公園の池では手作りイカダのレースをしたり、夕方からはいろんな音楽サークルが演奏したり。

今年の7月17日に、第31回のお祭りを盛況のうちに終えました。
筑波大学が今年で開学38年目のはずなので、筑波が研究学園都市になって数年後に始まったお祭りというわけです。


天久保オールスターズバンドでは、バンドが結成されて以来、毎年参加させていただいています。その前からもお付き合いがあったような気もします。
最初のころは、演奏だけ参加していました。お祭りの最後の出演バンドとして、いつものように楽しく演奏させていただきました。
昨年と今年は、模擬店の出店にも挑戦しました。参加するための準備会に参加するうちに、吾妻まつりを大切な場所だと思うようになりました。


みなさんの地元でも、地域のお祭りがあったでしょうか。
観光客のたくさん集まるような大規模なお祭りのことではありません。町内会のせいぜい数十軒くらいの寄合で開くお祭りです。「村祭り」というのがいいかもしれません。夏祭りであれば花火がほんのちょっとだけ打ち上がるような、秋の祭りであれば収穫された新米でつくった甘酒が振舞われるのがメインイベントだったりするような、初子が産まれた家があればみんなで押しかけて酒盛りをしているような、そんなイメージのお祭りです。

そんなお祭りを子どもの時分に体験していることがよいことであるかどうかは私は判断できませんが、第1回の吾妻まつりは、そういうお祭りを研究学園都市につくりたくて開かれたのだ、という話を聞きました。

つくば市吾妻は、大きな公務員宿舎が並んでいた場所です。いまはずいぶん状況も変わりましたが、30年前の吾妻地区は、歴史の存在しない集団居住地区というようなものだったようです。「旧住民・新住民」という言葉が使われたことからも、さいしょに移住してきた研究者やその家族たちの生活を想像します。

「村祭りの記憶がないままに大人になる子どもたちは、大人になっても村祭りを知らない」ことを良しと思わなかった30年前の有志たちが始めたお祭りは、たしかにこの場所に根付いたようです。
貯めてあったお小遣いを握りしめ、ヨーヨーとクジ引きのどちらを買うか迷った記憶。いつもはちょっと恐いお隣りのおじさんが、屋台の焼きソバを勝手に大盛りにしてくれて、ちょっとびっくりした記憶。

そういう記憶の一部として、天久保オールスターズバンドの音楽が溶けているのかもしれないと思うのは、ちょっとノスタルジック過ぎるかもしれないけれど、なんとなく幸せなものです。


吾妻まつりは、「ふるさと」をみんなで歌ってフィナーレを飾ります。
駆けまわる野山も、釣りをする小川もないかもしれないけど、彼らや、そして私たちにとっても、この場所はふるさとになるのだなあと思ったのでした。

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