私の人生はもったいなかっただろうか

決してレベルの低くない国立大学に入学したものの、うまく立ち回ることができずに中退した。3年前の話である。
実家に戻ることはせず、フリータとしてアルバイトをした。夜勤中心の生活は楽ではなかった。
最終学歴が大学中退ではフリータでい続けるしかないと、1年後、通信制の短大に入学した。簿記の勉強をして、6月の試験で2級の資格を取った。簿記2級を武器にいくつか会計関係の採用に応募してみたが、ダメだった。大学中退とは、社会性に欠け、体力がなく、努力が足りないことを示しているのだ。否定はできなかった。
それでもあきらめずにハローワークに通ったのがよかった。12月に受けた派遣会社で、希望していた仕事ではないものの、職を得た。ちょうど前任者が翌月に辞めることが決まっていて急いで後任を探さなくてはいけない状況だった。運がよかった。週3日の勤務で、仕事から得るものはほとんどなかったが、とにかく社会経験ができるのが嬉しかった。
8ヶ月ほど働いたが、仕事は少しもおもしろくなく、自分にとってプラスになる要素がなく、また自発的に成長する気力もなかったため、辞めさせてもらった。3週間ほどは暇にしていたが、9月の末から同じ派遣会社で経理関係の仕事を紹介してもらった。最初に応募した職種に近いものだ。このときもやはり前任者が近く辞めることが決まっていた。
順調に大学に通っていたら、いまどうしていただろう。同期の連中は社会人2年目、大学院にいった人たちも来春には就職する。自分にいわゆる「就活」が満足にできるとは思えないが、ずいぶんと違う人生になっていたことだろう。
大学を中退したことを人に話すと、反応は決まっている。もったいないねえ。せっかくいい大学に入ったのに、もったいなかったねえ。
大学をやめたことは後悔していない。早い段階で中退し、自分でなんとかしていこうと動けたことは、よいことだったと思う。大学にきて、さまざまな出会いがあった。やめたあとも実家に戻らずにいたことでうまれた出会いも多かった。インターネットを通じて知り合えた人たちとは、おそらくこの街に来なければ出会わなかっただろう。
もちろん、中退と卒業を比べれば、卒業のほうがずっといい。しかし、あの大学に在籍したことで得られるだろう価値は、違う形で、十分に得られていると思うし、それはこれからも続いていくだろう。
私が過ごした時間は、少しももったいなくはない。そう言い続けられる人生を送りたいと思う。