28歳だけど「北島三郎特別公演」を観て感動してきた
なぜ北島三郎?
北島三郎の明治座公演は、去年の夏に togetter で話題になっていたのです。これを読んで、行かなくてはと決意したわけです。
北島三郎公演を軸にして考える、エンターテインメントの底力について。 - Togetter
公演の様子など
プログラムは、前半がお芝居『伊那の勘太郎 信州ひとり旅』、後半がヒットパレード歌謡ショウ。12時開演、休憩35分、終演は15時半。わりと長丁場です。これを1日に2度やるのだからすごい(私が観に行った日は夜公演はなかったけど)。
客層は高年齢層ばかり。中央値は70歳くらいだったのかなあ。バスツアーのコンダクタなどを除けば、30代より若い客は、私を含め5人もいなかったと思われます。
明治座は創業140年。きらびやかでした。各階ロビーの物販コーナの充実ぶりもすごかった。ついつい幕の内弁当など買い求め、幕が上がる前に食べたりしました。
前半のお芝居
時代劇なお芝居をやるのは毎回の恒例のよう。今回の『伊那の勘太郎』、死んだはずの男が村に帰ってきて、当時の女房は別の男と連れ合いになっていたりする、そして悪党を懲らしめたりする話。昭和18年の東宝映画が下敷きらしい。渋い。
意外だったのは、ぜんぜん歌がなかったこと。ミュージカルばりに歌うのかと想像していたけど、終盤に「主題歌」が流れただけだった。観客は歌を聞きに来ているのではなく、カッコいい北島三郎を観に来ているのだろう。
人情劇であり、悲劇ではあるのだけど、会場からはちょくちょく笑いが起きる。大立ち回りな殺陣も3回ほどあった。北島三郎、御年76歳。
「上手・下手(かみて・しもて)」は定型に乗ってやってるんだろうなと感じた。下手からの登場、上手への退場。その反転。主客が変わる場面での、あからさまな立ち位置の移動など。芝居の文法がそれなりに染みついている観客を相手にしているのかな、という印象を受けた。
あっという間の90分間で、歌を聞きに来たつもりだった私たちも最早じゅうぶんに満足した。
後半の歌
長い休憩時間にビールを飲んだりして、いよいよ後半。
最初からクライマックスという感じで、幕開きから派手なセットのなかで北島が歌っている。
生演奏なのだけど、このバックバンドがすごい。トランペット4、トロンボーン4、サクソフォン4、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスのビッグバンド編成に加えて、弦楽カルテット(バイオリン2、ヴィオラ、チェロ)、男女3人ずつのコーラス、ティンパニを含むマルチパーカッション。そしてバンドマスタは尺八。バンマスが尺八。この日一番の興奮ポイントでした。フルバンドのトップが尺八って。
曲の1番だけを歌って、演奏が終わったら少し喋って、喋ってるところに次の曲のイントロがかぶって、の繰り返し。途中で司会が出てきたり、弟子が歌ったり、セットが転換したりもするけど、基本的に北島三郎が歌い続けている感じ。一気に10曲くらい。正直、彼の曲に詳しいわけではなく、どれも同じ曲のようにも聞こえます。音域も調性もずっと同じような感じ。でもねえ、いいんですよ、やっぱり。いいものはいい。
中盤でバックバンドが完全に下がって、伴奏がおそらくカラオケになりました。舞台が広くなって、小さめのスクリーンが降りています。過去の公演でのお芝居を振り返りながら、お芝居の主題歌を歌うというコーナに。弟子の大江裕との漫才トークを交えながらの進行で、休憩という感じ。
ラスト2曲は、これもどうやら毎年恒例の展開。『北の漁場』では、舞台上に漁船が現れてダイナミックに動く!! 「北の漁場はヨ〜 男の仕事場サ〜』ウォー!!! 舞台はスモークがガッツリ炊かれ、荒波を突き進む男たちの船の力強さです。
そして、『まつり』。ラストが『まつり』なのは会場全員がもう分かっていて、圧倒的な期待感に満ちています。船が捌けると客席通路によさこいソーラン的な踊り子たちが登場、さらに舞台上では和太鼓の乱れ打ち。すごい! この上なく熱くなってきた舞台上へ、さっきの漁船のように大きな白い鳥が登場、鳥の背で北島が歌う! 踊り手も追加投入され、和太鼓もいるし、まさに「まつり」であります。白鳥のセットは舞台端まで動いてきて、1階客席の5列目あたりの上空まで出てくる。サブちゃん近い!近いぞ!
とにかく『まつり』の多幸感、高揚感。熱気。北島三郎も観客たちも、いい年なわけで、にもかかわらずの熱狂。すごかった。「せがれ その手がァ宝物〜」でなぜか泣きそうになった。
カーテンコール
祭りが終わったら終わりなのであって、アンコールはありません。カーテンコールがとても丁寧だと感じました。総出演者は123名だそう。
北島からの感謝の言葉。「お客様が来てくれて、応援してくれるから、われわれは舞台でご飯を食べさせてもらえているんです。みなさんの声援が、私たちの力になります。」というようなことを言っていました。心からの言葉であるのだろうなあと感じます。
北島三郎を見届ける
観客の多くはリピータのようでした。「ここが去年と違ったね」「今年は来年のことを言わなかったね」などと聞こえてきました。
日本中からの観光バスが、何台も明治座に集まっていました。高額なチケット、旅費もかかります、気軽に来れるわけではないでしょう。毎年、年に一度、また来年も、サブちゃんも自分も元気であり、この公演で再会できるように。そういう想いがたくさんあるのだろうと思います。
たとえば私たちが『エヴァンゲリオン』シリーズを見届けずにはいられないように、あるいは『ガラスの仮面』の最終回を待つ世代があるように、北島三郎の公演を観続ける人たちもあるのです。その想いの集まりが、私たちに夢を見せているような気がしました。