野球は球技というよりボードゲームなのでは

にわか野球ファンとなり、プロ野球の日本シリーズを熱心に観ていた。楽天優勝おめでとうございます。
野球は不思議なスポーツだと思う。見ていてパッと理解できるルールではない。多くの人たちが理解できているのは、日本人にとって野球が国民的スポーツであり、高校野球プロ野球が一年を通していつもテレビ放映されていることによる。有名だから有名、常識だから常識、というタイプのものだと思う。
野球のルールを説明することは、あまり簡単ではない。特別なケース(インフィールドフライとかエンタイトルツーベースとか)を説明しにくいというのではない。基本的なルールの説明が難しい。
この困難さは、他のスポーツと比較するとわかる。サッカーは「手を使わずにボールを操り、ゴールに入れる」ゲームだ。バスケットボールは「ボールを持ち歩かずに、ゴールに入れる」ゲーム。バレーボールは「ボールを相手の陣地に落とす(自分の陣地には落とさせない)」ゲーム。テニスや卓球は「ボールを相手の陣地に入れ、それを相手に打ち返されないようにする」ゲームだ。サッカーの圧倒的なわかりやすさ。他の球技もおおむね「ボールを相手のゴール(陣地)に入れるゲーム」だと言っていいと思う。
では、野球はどんなゲームだろうか。野球は、「3アウトになるまでに塁を4つ進むことで得点できる、というセットを互いに繰り返すゲーム」だと思う。塁を進む方法はいくつかある。4つ進めるのがホームランで、フォアボールやデッドボールだと1つ進める。アウトになるのは、バッターが打てなかった(三振)、打ったけどノーバウンドで捕球された(フライ)、塁の移動に失敗した(内野ゴロでバッターが一塁でアウトになるとか、ランナーが盗塁に失敗したとか、3塁まで行けると思ったけど返球が早くて間に合わなかったとか)の3パターンがある。
わかりやすく説明したつもりだが、どうだろうか。いきなりバッターなどの専門用語が出てきて、本当の初心者には理解できない説明だとは思う。ともかく、野球というゲームの本質は「アウトが溜まる前にたくさん進塁する」ということだろう(本質という言葉がおかしければ、「モデル化すると」くらいでお願いしたい)。
「たくさん4つ進塁した方の勝ち」というルールだから、たくさんヒットやホームランを打った方が必ずしも勝つわけではない。このあたりも野球の面白いところだと思う。
マンガ『スラムダンク』に、主人公が「バスケットボールなんて玉入れ遊びだ」と発言してバスケ部キャプテン赤木を激高させるシーンがあるが、野球以外の球技は本質的には「玉入れ遊び」だと考えられる(いまはアメフトのことは思い出さないでほしい)。玉入れ遊びを、いかにエキサイティングに行うか。それが球技の発展の歴史ではないだろうか。
ところが野球は「玉入れ」とは言えない。たしかにボールを投げて打ち返すことで進行するものの、打ったボールを場外ホームランにすることが目的ではない。とにかく進塁。進塁こそが得点につながり、勝利につながる。野球はすごろくに似ている。それも単純なすごろくではなく、マップを進みながらいろいろなアイテムを使えるようなボードゲームに似ているように思う。こう考えると、野球のわかりにくさも納得できる。野球は「玉入れ遊び」ではないのだから、初心者が楽しめなくて当然だろう。
野球が高度なゲームだとか、直感的でないからダメだとか、そういうことを言いたいわけではない。ただ、野球を他のスポーツと同じような楽しみ方ができるものだと捉えるのは、実は違うのではないか、と思う。