小説『百年の孤独』を読んだ(読書ガイドのための人物リスト付き)
有名なものには触れておきたいのが人情だ。
訃報に触れての作品への接触は、きっかけとしては最善のものとはいえないだろうけれど、おそらく最後のきっかけとなる。作者の訃報とそれを悲しみ偲ぶ声によってそそられた興味は、それが熱いうちに打たなければ、今後はもう手が伸びることはない。
というわけで、ガブリエル・ガルシア・マルケス氏の訃報を知り、『百年の孤独』を読むことにした。
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)
- 作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,鼓直
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 単行本
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かつて、まだ私がもう少し若いころに、この小説に一度取り組んだことがあった。なんだかよくわからなくて、5%程度で読むのをやめてしまった。面白いんだかなんなんだか、わからなかった。
今回も、やっぱり、面白いんだかなんなんだか、よくわからなかった。よくわからないけど、面白かった。よくわからないけど面白いのだ、こいつは。なんなんだ。なんだかわからない。でも面白い。
「名作」と呼ばれる小説や、教養として読むべきなどとされる小説は、ぜんぜん面白くないと感じられるものも少なくない。ところが『百年の孤独』は面白い。そして、なんかすごい。なんかすごいのだ。まったくひどい説明で、読書感想文の宿題に出したら落第するかもしれない。簡単に言うと、「よくわからないけど、すごいし、本当に面白い小説」だ。
独断的な人物リスト
ここで、この小説を読んでない(しかし読もうとしている)人へ向けて、読書ガイド的に人物リストを書きたい。
Wikipediaにも登場人物は載っているし、本にも家系図は掲載されている。しかし、これらはあまり役に立たない。
いちばんいいのは、自分でメモを取りつつ読むことだろう。重要そうに思えてぜんぜん重要じゃない人物の名前を熱心にメモしたり、端役だと思われて読み飛ばした人物があとから何度も出てきたりすることも含めての読書体験だと思うから、本当は下記のリストには意味がないかもしれない。
名前に併記した解説は、必ずしも適切ではない。ネタバレもある。記載はほぼ登場順。
- ホセ・アルカディオ・ブエンディア
- 最初の主人公という感じの人物。舞台となる街「マコンド」を開拓した。
- ウルスラ
- ホセ・アルカディオ・ブエンディアの妻。
- メルキアデス
- 謎のジプシー。
- プルデンシオ・アギラル
- マコンドが開拓される以前に死んだ男。
- ホセ・アルカディオ
- ホセ・アルカディオ・ブエンディアの長男。ジプシーにくっついてマコンドを出て行ってしまうが、そのうち帰ってくる。
- アウレリャノ・ブエンディア
- 大佐。ホセ・アルカディオ・ブエンディアの次男。結婚したり、革命の士になったりする。金細工が得意。
- ピラル・テルネラ
- トランプ占いの女。ホセ・アルカディオ(長男)およびアウレリャノ・ブエンディア(次男)それぞれの子を産む。
- ドン・アポリナル・モスコテ
- マコンドの初代市長。
- レメディオス・モスコテ
- 市長の末娘。アウレリャノ(次男・大佐)に見初められ、アウレリャノと結婚する。
- アマランタ
- ホセ・アルカディオ・ブエンディア(開祖)とウルスラの娘。
- レベーカ
- どこかからやってきた少女。ブエンディア家で育てられる。土を食べる習慣が抜けない。
- ピエトロ・クレスピ
- イタリア人男性。自動ピアノの技師。
- アルカディオ
- ホセ・アルカディオ(長男)とピラル・テルネラの子。ブエンディア家の三男のような扱いで育てられる。大佐の出征後、武力でもって大きな顔をする。
- アウレリャノ・ホセ
- アウレリャノ・ブエンディア(次男・大佐)とピラル・テルネラの子。やっぱりブエンディア家で育てられる。
- サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダ
- アルカディオ(三男のような)の妻。
- ホセ・アルカディオ・セグンド
- アルカディオとサンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダの、双子の息子。バナナ会社で働いたりする。
- アウレリャノ・セグンド
- アルカディオとサンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダの、双子の息子。羽振りの良い暮らしをしたりする。結婚するけど愛人もいる。
- 小町娘のレメディオス
- アルカディオとサンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダの娘。ものすごい美女に育つ。
- フェルナンダ
- アウレリャノ・セグンドの妻。没落貴族の出。
- ペトラ・コテス
- アウレリャノ・セグンドの愛人。家畜を増やす謎の力がある。
- ホセ・アルカディオ
- アウレリャノ・セグンドとフェルナンダの長男。法王になるべく留学。
- メメ
- アウレリャノ・セグンドとフェルナンダの長女。やっぱり留学する。
- アマランタ・ウルスラ
- アウレリャノ・セグンドとフェルナンダの末娘。
他にもまだ登場するし、家系図はもう少し続くが、アマランタ・ウルスラの登場まで読み進めたとすれば、もう頭の中にはブエンディア家の家系図が自然と立ち上ってくるはずだ。
この小説は、ブエンディア家という一族の物語だ。一族の物語であり、マコンドという街の物語だが、実はこれは女性を描いた小説であると思う。
読み終えてみて思い返されるのは、数奇な生き方をしたそれぞれの女性たちのことだ。アマランタのことはずっと気に掛かってしまうし、アマランタ・ウルスラの不思議な魅力もなんとも気に掛かる。ピラル・テルネラの魔女進化振りも面白いし、フェルナンダの長い独白には見方を変えさせられてしまった。
上記リストの通り、登場人物には同じ名前が繰り返し出てきて、わけがわからなくなっていく。でも、そんなところが障壁になって、この小説を読まないというのでは、ちょっともったいない。なんだかよくわからないことこそ面白い。適宜ガイドも参照しつつ、よくわからないけど面白いこの小説を楽しみたい。