はじめてのフィギュアスケート観戦

(この文章は、2013年7月にfacebookへ投稿した文章を改定したものです。)


「ミュージカルと大相撲とフィギュアスケートは一度は生で観たい」と以前から思っていたのですが、安藤美姫さんの引退予告を知り、「観るなら今でしょ!」ということで行ってきました。

「プリンスアイスワールド2013」、7月12日(金)19時の回。東伏見ダイドードリンコアイスアリーナにて。


はじめてのフィギュアスケート観賞で特に感動したことを3つ。

  • 速い

移動が速い。想像以上にスピードが出ている。広い舞台の端から端を、あっという間に移動できてしまう。群舞のときほど、速さがより映える感じがしました。生身のダンスやバレエでは不可能なスピードによる表現ができるんですね。

  • 氷を削る音

跳ぶとき、曲がるとき、靴の刃が氷を削る音が、客席まで聞こえます。ショーの音楽が派手だとこれは聞き取れないのだけど、静かな曲調のときには、氷削音が神々しい美しさをもったアクセントになります。この美しさは、会場でないとわからない。

  • ジャンプへの歓声

フィギュアスケートといったら回転ジャンプ。テレビで観ていると「トリプルルッツ!」とか言ってるけど、素人にはぜんぜんわからないですね。それはさておき、ジャンプが成功すると普通に「おぉ〜!」って声が出ました。着地に失敗するとみんな「あぁ〜…」って言うんだけど、それも普通に出る。派手な技が決まると「ぅおおお!」って声が出る。こんなに歓声が素直に上がるものだとは思いませんでした。


ショーのスタイルは、プリンスアイスワールドのバレエ団みたいな人たちが20人くらいいて、その人達がメイン演者、有名選手が公演ごとにいろいろとゲストで来る、という具合のようです。群舞、ソロ、ソロ、群舞、ソロ、ソロ、群舞、というようなステージ構成でした。

オープニングとエンディング曲が『RENT』で、前半最後の曲が『リバーダンス』で、全体のラストが『レ・ミゼラブル』。パンフレット冊子を買えばおそらく書いてあるのだろうけど、場内での説明はほぼなし。何の曲で踊ってるのかくらいは知れるといいなとは思いました。

照明演出はけっこう気合入ってる印象だったのですが、音響がいま一歩という感じでした。あの建物構造では仕方ないのかもしれないけど、中低音域がもっとクリアに聞こえるといいのになと。やっぱりフィギュアスケートにとって音楽はあまり重要じゃないんだろうか、なんて邪推してしまいます。

とても興味深く思ったのは、11,000円のSS席が、パイプ椅子だったこと。リンクの目の前(相撲でいう砂かぶり席)ではあるんだけど、11,000円のパイプ椅子ってすごい。

休憩時間にベンツが出てきたのは面白かった。ベンツがスケートリンクを徐行してましたね。


競技者としての一線を退いたあとも、アイスショーという舞台で続けられるのは、素敵だと思います。

個々の演者については、八木沼純子さんの演技がすごくよかったとか、怪力ペアのリフトがとんでもなかったとか、ジュベールさんマジイケメンとか、ジュベールさん明らかに他の人よりジャンプうまいし高いし素人目にもすごいよとか、安藤美姫さんのジャンプ成功して本当によかったなーとか、リバーダンスの隊列ステップがかっこよかったとか、八木沼さんのエポニーヌよかったとか、いろいろありました。とにかくジュベールすごかった。本田武史さんもアツい演技でよかったです。荒川静香さんがなにかとイナバウアー披露して盛り上がるのも面白かった。


スケートだからこその身体拡張性について。
なんでスケートだと3回転ジャンプなんてできるのかと不思議だったのですが、あれは水平方向の運動エネルギーがジャンプのタイミングで垂直方向に変換されることで高さを得てる、ということなんだろうと感じました。あの速さで走れるなら高く跳べるよなと納得がいきました。スーパーマリオBダッシュすると高く遠くへ跳べるのと同じことでしょうか。
移動速度が拡張されたことによって、陸上では不可能な表現が氷上では可能になったのがフィギュアスケートです。ところが、それに甘んじているのか、あるいは別の理由なのか、陸上でできることが氷上ではできないということもあるように思えました。
具体的には、上半身をもっと魅せられないものかなあ、という点が特に気になります。想像される理由としては、スケートリンクが広すぎるため、上半身の演技や表現を頑張ったとしても客席まで届きにくいということ。陸上のダンスやバレエは、舞台がもっとずっと狭いから、そこに違いがあるのかなと。
あるいは、身体トレーニングの効率の問題なのかもしれないですね。ジャンプ等の技能習得のために訓練リソースを多く割くのは、当然の判断だろうとは思います。


また観に行きたいです。あの氷削音をまた聴きたい。