誰が「珈琲」をつくったのか? 検索と図書館で「珈琲」の歴史を探すゲーム #珈琲咖啡探索隊

コーヒー、漢字で書けますか? 「上島珈琲店」や「珈琲館」、「炭焼珈琲飴」など、店名や商品名にもあるように、「珈琲」と書くのが普通です。
では、その漢字表記はいったいいつから使われているのでしょうか。

そもそもコーヒーが日本で初めて飲まれたのは、いったいいつなんでしょう。実は、江戸時代には長崎ですでにコーヒーが飲まれていました。その頃からコーヒーが「コーヒー」と呼ばれていたかというと、どうもそうではなさそうです。外国から来たものですから、音もはっきりと決まらず、「コッヒィ」だとか「カッヘイ」などと記された江戸時代の文献が残っているようです。


ところで、現代の中国語ではコーヒーは「咖啡」と表記されています。日本語の漢字とよく似ていますが、偏が「口」ですね。
江戸時代に日本へやってくる外国語は、中国語とオランダ語ですから、コーヒーもまず中国語の「咖啡」が入ってきてそれから「珈琲」になったのかもしれません。そうじゃないかもしれません。
中国語の漢字といえば、日本語のものより簡略化されているものが多いというイメージもあります。コーヒーもそういうことなのでしょうか。


いったい、「珈琲」という表記はいつうまれたのか? そして、いつから一般的に使われるようになったのか?


#珈琲咖啡探索隊「珈琲」と「咖啡」の差は19世紀以前のどこで生まれたか? 日本語と漢語のそれぞれの展開をdigる - Togetter
これは、漢字文化圏での「珈琲」という表記にまつわる様々な謎を、ネット検索や図書館の貴重書データベースなどを駆使しながら探っていく、ある種の「ゲーム」です。
togetterまとめの最初の方では、「大正時代ってもうコーヒー飲んでたのかな? その飲み物の名前は「コーヒー」でいいのかな?」というくらいの疑問を検証しているのですが、次第にいろいろな情報が少しずつわかってきます。とても長大なまとめであり、わかりやすく編集されたものでもありませんが、軽く飛ばし読みするくらいのつもりで読んでいくと、もしかしたら面白いかもしれません。


「#珈琲咖啡探索隊」と名付けられたこの「ゲーム」により、いろいろなことがわかってきました。
奥山儀八郎という版画家がいて、コーヒーの歴史について収集研究をしていて、『日本珈琲文献小成』という本が昭和13年に出版されていたこと。
そしてその成果は、現代のインターネット上にあまり継承されていなかったこと。
けれど、奥山氏が参照した多くの文献は、国立国会図書館近代デジタルライブラリーや、早稲田大学図書館の古典籍総合データベースによりインターネット上で閲覧可能であること。

奥山儀八郎が著した『珈琲遍歴』という本があります。この本の表紙裏に、こんな版画が掲載されています。

(味の素食の文化ライブラリーにて、許可を得て撮影)
コーヒーの異字を集めたこの「かうひい異名熟字一覧」は、日本全国の喫茶店での目撃情報があります(版権がどうなっているかは未確認)。いったいどうしてこんなにたくさんの「コーヒー」があるのでしょうか。奥山氏はいったいどうしてこんなにたくさんの言葉を採集できたのでしょうか。


初めの問いに戻りましょう。「珈琲」という漢字表記はいつから使われているのか?
日本国語大辞典』という全13巻のすごい辞典には、「文久二年(一八六二)の「英和対訳袖珍辞書」に見えるが、明治三〇年代末頃から徐々に定着し始め」とあります。では、その「英和対訳袖珍辞書」というのが最初なのか? というか、辞書に載るということはその言葉が既にどこかで使われていたということのはずで、じゃあそれはどこだったのか? 中国語の「咖啡」との関係は?
このあたりのことは、先のtogetterの9ページ目(2015年8月5日12時台)までを読むと、とても面白くわかるはずです。


さて、ところで、「珈琲」という漢字がはじめて日本語の出版物に記載されたのが文久二年だったとして、それから「珈琲」という漢字表記が生き残っていったのは、なぜなんでしょうか。
明治時代には「珈琲」と「咖啡」のどちらの漢字表記も使われていましたし、少数派ながらその他の当て字も使われていました。なにしろ、政府刊行物である官報においても「珈琲」「咖啡」のどちらもが使われています。
いったい「誰が」、「咖啡」を日本語から追いやっていったのか? このエキサイティングな謎は、まだはっきりとはわかっていません。もしかしたら、そんなことは何十年も前に誰かが研究しているかもしれないし、もしかしたら、誰もそんなこと調べていなかったかもしれません。それさえ、この文章を書いている時点ではわかりません。


この不思議な「ゲーム」は、あなたの参加を待っています。
あるいは、たとえば「日本で初めてチョコレートが食べられたのはいつか?」という疑問をインターネットで検索した結果からも、これとよく似たゲームが立ち上がりそうです。

「巨人の肩の上に立つ」という言葉があります。いっしょにコーヒーでも飲みながら、「巨人の肩」の大きさにため息をついてみませんか。


※2015年8月29日追記:
誰が「珈琲」をつくったのか?#珈琲咖啡探索隊 (ダイジェスト版) - Togetter
短めのまとめを作成しました。