『今こそ家政学 くらしを創る11のヒント』(『家政学のじかん』編集委員会編)
家政学のことを勉強しようと思う。私がおもに興味があるのは、炊事の運用だ。世の中にたくさん出版されている料理本に書かれていることは、私の知りたいこととは違うような感じがする。何がどう違うような感じがして、何が知りたいのか、まだ言葉にまとまらない。もっと系統的で根本的なところから考えたいように思われるので、学問らしいところの入門書から始めてみようと思う。
- 作者: 『家政学のじかん』編集委員会
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2012/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
11人の著者が、それぞれの分野について10ページ程度ずつ書いている。平易なエッセイ調で書かれていて、入門というより紹介のための本という感じ。
目次を引用する。
はじめに
序章 政 生活するということ第1部 命をはぐくむ
第1章 生 胎児の命は誰のものか
第2章 悼 大切な人を失う
第3章 備 互いに納得できる高齢期の生活第2部 人とつながる
第4章 結 高齢者が地域で暮らすということ
第5章 遊 「こどものまち」から考える遊びのスローライフ
第6章 連 「Co-食」のカタチと場第3部 暮らしをつくる
第7章 着 人によって変わる衣服のはたらき
第8章 食 「おふくろの味」と子育て
第9章 住 住まいの権利を考えよう
第10章 営 障がい者が地域で暮らすということ
第11章 学 今こそ家庭科!
目次からも分かるが、家政学の扱う分野は広い。家政学は、小中高での「家庭科」の基礎になっている学問だが、なるほど思い返すと家庭科はいろいろな分野を取り扱っていた。裁縫と緑茶を淹れる実習の記憶が強いが、たしか高校の家庭科では家庭経済や妊娠計画の話題もあった。
やはり第8章「食」が興味をもって読めた。執筆担当者は表真美さん。参考文献として示された『食卓と家族』(表真美、世界思想社、2010)は近いうちに読みたい。
読むなかで強く感じたのは、家政学に触れるにはどうしてもジェンダーとかフェミニズムとかミソジニーとかそういうキーワードについての冷静な知識体系を自前で用意しておかないと、著者の思想に振り回されかねないのではないか、ということ。本書の場合は11人というわりに多い人数で書かれており、寄稿者の立場も大御所から若手研究者に家庭科教員と幅がある。このため、思想的なところが統一されていない印象があり、そのバラつきがむしろよかった。もっと教科書的な本から入っていたら、思想的なバラつきが排除されているための思い込みが生まれているかもしれない。
私が興味のあることは、ジェンダーのことを切り離しても検討できるはずだと思っている。