自炊スターターキット、あるいは一人暮らしで買わなくてもいいものリスト

人は誰でも食べずには生きていけないが、何をどのように食べるかについては様々な選択肢がある。健康で文化的な生活を維持するためには、食事の用意を自分で行うことが重要だ。しかし、日々の炊事を運用することは予想以上に難しい。

さあ自炊を始めよう、と思い立ったなら、様々な調理器具を購入する必要がある。しかし、自炊がちゃんと続くのかどうか。せっかく買った高価な器具が、日の目を見なくなるのは悲しい。
自炊入門者が最初に買うべきもの、買わなくてもいいものを、下記にリストで示す。

  • 最初から必須のもの
    • 冷蔵庫
    • 電子レンジ
    • 包丁
    • ザル
    • フライパン(大きく深いもの)
    • トング
    • おたま
    • 洗剤、スポンジ
    • ペーパータオル
    • ラップ
  • 最初は必須でないもの
    • まな板
    • 計量カップ、計量スプーン
    • 菜箸、フライ返し
    • 炊飯器
    • ボウル
    • ピーラー
  • 状況によるもの
    • やかん
    • 電気ポット
    • 食器

必須調理器具

・冷蔵庫
冷蔵庫はほしい。コンビニの弁当やパンやカップ麺での生活であれば、冷蔵庫が不要ということもあるだろう。そんな生活では、健康で文化的な生活は実現されない。牛乳やヨーグルトなどを買い置きすることもできない。冷凍庫が十分に大きいものを用意したい。


・電子レンジ
電子レンジもほしい。立派なものである必要はないが、オーブン機能は付いているといい。電子レンジがあれば、冷凍保存したものの解凍はもちろんのこと、根菜類の下茹での代わりなど、簡単な調理にもけっこう使える。


・包丁
包丁の代わりになるものはある。キッチンばさみや、スライサーなどがあればいい。といっても自炊入門者には包丁のほうがいい。100円ショップでも売られているが、多少は値段のするものを買ったほうがよいだろう。錆びにくい材質のものを選ぶこと。


・水切りザル
ボウルの代用には、皿や鍋を使うことができる。ザルの代用はない。100円ショップのもので構わないので、大きめのザルを買おう。ザルがないと、茹でたスパゲッティの水切りが面倒だし、モヤシを洗うのも面倒だ。後片付けのときの食器の水切りにも使えるだろう。


・大きめのフライパン
大は小を兼ねる。フライパンは大きめで深さのあるものを1つ用意する。スパゲッティが茹でられるくらいのサイズを選ぶ。フタ付きのものがよい。いいものを買ってしまったほうがいいだろう。


・トング
トングを使っていないベテラン主婦もいるだろうが、必須器具である。トングがあればなんでもできる。菜箸にできることは、トングにできる。木べらやゴムベラが担当する作業も、トングでできる。残念ながらスープをすくうことはできないが、麻婆豆腐くらいならトングだけでいける。茹でたスパゲッティの水切りのためにザルを使わなくても、トングがあればほとんど問題ない。全体がステンレス製で先端が樹脂のもの、簡単な操作で閉じられるものがよい。

パール金属 リビンクリップ ナイロンクッキングトング 25.5cm C-285

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・おたま
これがないと味噌汁の味噌を溶けない。カレーもすくえない。最初から持っていたほうがいいだろう。100円ショップでも問題ない。


・洗剤、スポンジ
安いものでよい。消耗品であるから、気軽に捨てられる価格のものを選ぶべきだ。


・ペーパータオル、ラップ
ペーパータオルも安いものでよいから、最初から持っていたほうがよい。ふきんの代用だと思って、これで洗った食器も拭けばよい。
ラップは、サランラップクレラップがよい。そもそも安いものなので、変にケチらないほうがよい。

最初は必須でない器具

・まな板
まな板はなくてもなんとかなる。キッチンの作業スペースにサランラップだとか牛乳パックの開いたものだとかを敷けば、それでまな板の代わりになる。とはいっても、あったほうが便利だ。100円ショップでプラスチック製のものを買えばよい。ただし、本格的に炊事をするようになったら、いいまな板を買うのがよい。衛生管理が特に気になる調理器具であるから、むやみに木製のものを選ばないほうがいいかもしれない。
《追記》まな板が必須でないことについて、いくつかコメントをいただいた。やはりまな板は必須だとした方がいいかもしれない。個人的な感覚だが、100円ショップで100円で買ったものであろうと、「使わなかったから捨てる」というのは心が痛む。もし炊事をけっきょくぜんぜんしなくて道具を処分しようかというときには、100円のまな板を捨てるのだって、悔しいし心が痛むだろうと思う。それは包丁だって同じことなのだが、包丁はないと炊事は難しい。だから包丁は「必須」とした。と、こういうモノに対する心情は、一般的とも言い切れないので、やはり「まな板は必須」としておこうかとも思う。


・鍋
深いフライパンがあればたいがいのことはできるが、味噌汁をつくるのには向かない。ゆで卵も鍋のほうがつくりやすい。ボウルの代わりにもなる。まずは小さめの鍋を買う。小さめの鍋と、大きめのフライパンがあれば、数人分の食事を一通り用意するのにも十分だ。


・計量カップ、計量スプーン
調味料で重要なのは、濃度と配合比率である。「酒大さじ2、醤油大さじ1、砂糖大さじ1」とあれば、酒と醤油と砂糖を2:1:1くらいの比率で入れるという意味である。よって、コンビニでプリンを買ったときについてきたプラスチックスプーンを使って調味料を計測しても、ひとまずは問題ない。とはいえ、先人たちの知恵を活かすためには、規格品はいずれ用意する必要があるだろう。


・フライ返し、木べら、ゴムベラ
トングがあればなんでもできるが、トングでホットケーキをひっくり返すのは難しいし、タマネギのみじん切りを炒めるのもやはり難しい。自炊の習慣がつき、調理するなかで「ちょっと不便だな」「こんなときにフライ返しがあったらな」と思うようになってから買えばいいだろう。


・炊飯器
炊飯器でなくても米は炊ける。そもそも、米を炊くことにこだわる必要はない(参考:まず、ご飯より始めよ(生き延びるための自炊入門) - うしとみ)。


・ボウル
食器やフライパンでも代用がきくのだから、最初から買う必要もない。自炊の習慣がついてきてから用意しても、遅くはないだろう。大中小の3サイズあると便利だ。


・ピーラー
自炊入門者のうちは、ピーラーを使う必要があるような野菜を買ってはいけない。したがって、ピーラーは最初は必須ではない。ジャガイモの皮を包丁でむくのは大変だが、それならジャガイモを食べなければいいだけの話である。ニンジンも1本のままのものを買ってはいけない。カット野菜を使えば、包丁もまな板も使わずに野菜炒めが作れる。最初はそれでいいのだ。なお、ジャガイモはラップで包んで数分電子レンジに掛けると、ふかしイモになって皮も簡単にむける。

状況によるもの

湯沸かしについては、住環境によるところがある。ガスコンロが2口あれば、やかんで湯を沸かすのもいい。1口しかないのであれば、湯沸かしは電気ポットに託すほうがいいだろう。やかんを使うのであれば、保温性の高い水筒などをあわせて買うのもよい。
食器は、ほんとうに最初のうちは、紙皿と割り箸で済ませるべきだ。レジャー用の紙皿を2種類くらい買っておく。洗い物はとても面倒な作業であるが、衛生上どうしても避けられない。洗い物をしない唯一の方法は、食器を使い捨てにすることだ。これは将来への投資であるから、もったいなくはない。


上記のことは、自炊入門者のためのものである。自炊入門者は、炊事をできるだけ毎日続けていこうとする、最初の段階にいる。下げられるハードルは下げたり外したりしていこう。むやみに高いものは買わない。たくさんのものを揃えない。手間が増えてしまうような選択は避ける。
自炊は、自分が食べたいものを食べ続けるための、食料調達の一戦略である。調理スキル、食材の保管や運用ノウハウといったものを身につけられれば、美味しくて栄養によいものを長期的に摂取できる可能性が高まる。そのためには、まず、始めることであり、続けることが重要である。